新型コロナ感染症対策としてのマスク着用の効果

気温が日を追うごとに増すこの季節、そして新型コロナ感染症が下火になりつつある昨今、マスクを常時着用することについての議論はますます活発になると予想される。


マスクを着用する効果について改めて考察したい。


1.マスクがマスク着用者をウィルスから守る・・・×


マスクの目の粗さではウィルスのような微細なものは防げないことはよく知られている。



2.マスクはマスク着用者の発する飛沫に付随したウィルスの拡散を防ぐ・・・△


感染者の唾液にはウィルスが存在することは事実であるが、飛沫が直接他人にかかるような距離でコミュニケーションをとることは日常生活でほぼ無い(そのために「ソーシャルディスタンス」と叫ばれている)。

飛沫感染で懸念すべきは「接触感染」の方である。つまり、感染者の飛沫が身の回りの物体の表面に付着し、それに非感染者が触れ、そこにウィルスが存在しその触れた手が非感染者の目、鼻、口、傷口等に触れた場合に感染するという経路である(さらに、この物体の表面に存在するウィルス自体が感染力を維持していた場合に限る)。

そしてこの接触感染を防ぐために手指(「しゅし」?「てゆび」?新しい生活様式における新しい語彙なので統一すらされていない)をアルコール消毒したり、座面をアルコールを含んだ布で拭ったり、ビニール手袋をつけて食事を取ったりしているのだから、控えめに言って対策が過剰である。少なくともこれらの全てあるいはマスク着用どちらかが不要である(目的、効果が重複していて非効率、さらには不経済的である)。


3.マスク着用は感染対策の意識が高いことを伝える・・・〇


おそらくこれが不文律となっていて、マスク着用さえしていればその人は社会常識を備えていると判断されるようになってしまったのではないか。というのは、様々な場所で2歳以上の子どもまでもがマスク着用を促されるようになった一方、その着用の仕方まで厳密に指示されることはかなり稀であるからである。幼い子どもはその不快さからか頻繁にマスクに触り、また鼻を出したまま着用していることも少なくない。もちろんこういった傾向は大人にも見られる。

ちなみに、マスク着用によってそれを気にしてマスクを頻繁に触るようになるとマスクについているかもしれない様々なウィルスなどを手に付けるし、また着用者自身が手についているかもしれない何らかの病原体を目鼻口を通して自分自身に感染させてしまうリスクがあることはあまり触れられない。

つまり社会的に求められているのはマスク着用による感染予防ではなく、国民一人一人が共通の目的に則って行動しているかどうかであるのではないだろうか。

もちろん、マスク着用を感染症対策を主眼として行っている人もいるだろう。この2年間でメディアを通して感染の恐怖をあおってきた成果であるだろう。

これは新型コロナウィルスが脅威ではないと言っているのではない。デルタであろうとオミクロンであろうと別の変異株であろうと。


新しい感染症が流行したときに国が取るべき手段は2つある。

1つ目は水際で国内に入るのを防ぐこと。

2つ目は感染者増加のペースを緩め医療崩壊を防ぐこと。


1つ目はこのグローバリゼーションの現代においては不可能であり、コストが大きい。そこで我々は2つ目の目的のために民間レベルで協調してきた。それはマスク着用であり、mRNAワクチンの前代未聞である全国的な接種である。

そして今、この2つ目の目的は達成したように思われる。この2年間にあった病床数の逼迫も乗り越えてきた。新型コロナウィルス用病床数の全国的な拡充がなされなかったにも関わらず。


感染症は人類の歴史とともに存在してきたし、それにかかったら人生終了ではない。これは至極当たり前のように思えるが、感染者の苦しそうな映像や後遺症を持つという人物のインタビュー等の報道が常識的な感覚を麻痺させているのかもしれない。


マスク着用の是非を問う声が時折聞こえるが、大多数の「マスクぐらい黙ってしておけ」という声に潰されてしまっているようである。


確かに人口の多くの割合を占める世代にとってはマスク着用によって受ける弊害は少ないのかもしれない。


一方、幼い子どもを含め成長過程にある者たちにとって、相手の発言がはっきりと聞こえ、相手の表情を通して喜怒哀楽を知ることは代えがたい体験である。この両方ともマスクによって阻害されているということはこれらの世代にとって非常に大きな害である。


「マスクぐらい黙ってしておけ」という人たちの考え方を変えるのは難しい、あるいは不可能かもしれない。しかしせめて若い世代のことも考えてほしい。自分たちが幼かったころ、マスクを着けて日々暮らしたかったかどうか。

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